谷川連峰朝日岳 湯檜曽川本谷 沢登り

tsuruさんと行く日本百名谷シリーズ第二弾は湯檜曽川本谷。在京時代、谷川周辺の沢はいくつか登ったがここは未踏だったのでお付き合いすることにした。それにしても山口からは遠い。車で片道正味13時間。しかもお盆休みで渋滞が予想される。この行き帰りの移動が最大の核心と思われた。

 

 

8/11の山の日700に山口を出発。交替で運転しながら土合駅にたどり着いたのは2300頃。前夜祭も早々に切り上げて車中で前泊。

 

(写真:岳人にはおなじみの土合駅)

8/12 600土合駅の登山ポストに計画書を出して出発。本流沿いの新道を歩いて武能沢が横切るところで入渓し、本流へ。さすがに水量は少ないようだが、明るく開けた渓相で期待が高まる。

 

すぐにゴルジュ様となり魚止めの滝からの連瀑帯はもったいないけど無理せず巻く(先が長いので)。平凡な河原歩きの後渓相はナメ主体となり、昨年のクワウンナイを思い出す。滑滝あり、瀞あり、滑床も多彩な色の岩ありで変化に富んでいる。

 

20mあまりのすっきりした廊下が表れる。これが赤淵だろうか?

足がつかないし両壁ともへつれないので泳ぐ。背中のザックが浮いてヘルメットで頭を押さえられ苦しい。ここは最初からロープを引いて空荷で泳ぎ、ザックと後続を引っ張るのが正解。基本的なことなのに、久しぶりだと忘れてしまっている。この泳ぎで全身ずぶ濡れになり寒い!連日の猛暑にあえぐ日本列島にあって、ブルブル震えながら歩いている我々はhappyだといえようか。

 

 

やがて90°左に屈曲した本流に左岸から二本の支流が合わさる珍しい形の十字峡。自然の造形は本当に豊かで面白い。なお続く滑滝を超えていくと豪快な抱き返りの滝20mは左壁にとりつき直登。

 

 

(写真:壮大な30mナメ滝)

次に幅広の滝10m。ここが登りの核心だった。ルートは瀑芯の裏側をかいくぐるように左上し左壁の乾いたところを登る、と見てとれる。ところが、登攀隊長不調のため代理を仰せつかった自分はここでひるんだ。瀑水を浴び続けることで体力と気力がどんどん奪われていく恐怖を、これまで幾度となく味わっているからだ。おのずと右岸の草付に巻きのルートを求めた。結局そこには踏み跡もなく(ということはこれだけメジャーなルートにあって巻き道として利用されてないということ)、どんどん巻き上がって行く危険な状況。最後は25mくらい上がったところの灌木に捨て縄を打ち、懸垂下降で基部に戻った。ベテランのtsuruさんは早々にこのルートがNGと見切っていたが、淡い期待を抱いた自分がずるずると引きずってしまった。時間も相当ロスして精神的にきついところだったが、2度目のトライで選択肢は一つしかない。腹を決め、カッパを着こんでロープを付け、瀑芯に突入。予想通り激しい落水がどんどん体力を奪っていくのを感じるが、幸いひどい悪場はなく、乾いた左壁に抜けた。さほど難しい登りではないが、念のためハーケンで支点をとり、滝上でtsuruさんを確保。結局この滝に1.5時間以上を要してしまった。

その後も滝場が続いて飽きさせない。ようやくハイライトの大滝下にたどり着いたのが1730。ここもロープを出して、定石通り左側から取りついて登り、右岸のバンド状をトラバース。

 

ほどなく二本目の送電線直下。テン場適地の二股まではまだ滝場が続いている。既にいい時間でもあり、泊まれそうな河原があったので今日はここまでとする。鉄砲水がきたら一撃なので、本来ならこんなところで泊まってはいけないのだが、すぐに逃げられるようにと荷物をまとめてツェルトを張った。薪が十分集められずまともな焚火にはならないが、どうにか点火。これだけで気分が随分違う。濡れた体や荷物を乾かすほどの焚火にならなかったので、快適に就寝とはいかなかったが、早朝の冷え込みもまださほどではなく、無事朝を迎えることができた。

 

(写真:40m大滝)

8/13 550 BP出発。沢はまだまだ開けていて、数えきれないくらい滝場も続く。快適に直登できる滝がほとんどなのが楽しい。やがてたどり着いた二股は確かにテン場として一等地だ。ルートを右にとりしばらく行くと水量も減るが小滝は続く。

と、一人の単独行の男性が追いついてきた。今回はじめて遭遇する別パーティである。聞けばなんと朝500に出発してもうここまで登ってきたとのこと。身軽な日帰り装備で、当然滝も巻きもノーザイルでフリーだろうが、それにしても恐ろしく速い。世の中には色んな人がいるもんだと、と妙な納得感で先を譲った。

 

(写真:上流部の渓相)

長い下山を考えれば早く山頂へと気がはやる。奥の二股を過ぎてがぜん傾斜が急になりどんどん高度を稼ぐ。沢はどこまでも沢形を刻んでくれている、と思いきや、そのうちササヤブに突入。踏み跡はあるようだが・・・・。ササはやがてハイマツに。「なんかアンチョコとは違う詰めだなあ」と思いつつ、久しぶりのハイマツ漕ぎもこれまた楽しである。

ようやく稜線に抜けて10:30めでたく朝日岳の山頂に立った。朝から立ち込めていたガスも少し晴れて、谷川の主稜線が目に飛び込んでくる。うん、すがすがしい。

 

さあ、下山である。コースタイムで4時間半。もう少し早く降りれるかなと思っていたが、そう甘くはなく、ほぼコースタイム通りの時間を要した。「あれは一の倉か?こっちがマチガ沢か?」と谷川の岩場がおどろおどろしい姿で望まれる笠が岳~白毛門までの稜線。大きなアップダウンの繰り返し、炎天下の尾根歩きはこたえるものだ。土合にたどり着いた時は二人ともバテバテだったが、充実した、いい山行だった。

 

 

 湯テルメで二日間の汗を流し、うまいヒレかつ定食で腹を満たして帰路についたのが18:30。夜中じゅうまた二人で交代しながら高速を飛ばし、翌朝8:30には山口に帰りつくことができた。これなら3人いればもっと楽に上の方の山にも行けると実感した。さあ、来年はどこの百名谷にしましょうか?tsuruさん。

 

メンバー toshi(L、記、食料) tsuru(SL、会計)

コースタイム 8/12 6:00土合駅 8:30武能沢出合 18:30送電線下C1

      8/13 5:50C1 10:30朝日岳 16:00土合駅

コメントをお書きください

コメント: 3
  • #1

    k2c (火曜日, 23 8月 2016 15:14)

    お久しぶりです。
    やっぱりアルプスの沢は違いますね!
    写真と報告を見ていて感動と、熱くなるものを感じました!
    私は泳ぎは苦手ですが来年はお二人にご一緒出来たら幸せです。
    素晴らしいレポートありがとうございました!

  • #2

    toshi (火曜日, 23 8月 2016 15:25)

    k2cさん お久しぶりです。
    アルプスでなく谷川ですが、どっちにしてもこちらから見ればスケールの大きな山に違いはありません。たまにはいいものです。
    泳げなくてもロープで引っ張りますので、ぜひ大きい沢へも行きましょう。
    また、来年と言わず、今シーズンこそ山スキーご一緒しましょう。

  • #3

    k2c (火曜日, 23 8月 2016 19:12)

    谷川岳の所だからアルプスではないですね。失礼しました